懐石と会席
茶の湯の料理から生まれた懐石料理は、千利休時代のこと。
「懐石」という字を使うようになったのも、茶の湯の基本である
禅の思想・侘び茶の精神が意に沿った字として、この字があてられた
といいます。
侘び茶の懐石で利休がこだわったのは見た目だけを重視した
華美な茶会ではなく、茶や料理・形式など質にこだわったもの。
お茶や料理を体に負担なく、最も美味しくいただけるよう
旬の食材にこだわり、温かいものは温かいうちに、
食べる人の身になって心を尽くしたお料理なのです。
旬の食材は、季節ごとに私達のからだが必要とする栄養を
与えてくれます。例えば夏には清々しい鮎などの魚が食欲を
そそり、秋から冬になると脂がのったまながつおなどが美味
しくなり寒さに向けて自然と脂肪をとる。
このように旬の食材を楽しみながら健康を維持することが
できるのです。
会席料理の始まりは、江戸時代に遡ります。
当時、今でいう「三ツ星レストラン」ともいうべき高級料亭が
数々でき、大名クラスの武士や豪商が派手に遊びました。
茶室での接待とは別趣の、懐石などの細かい決まりごとに
こだわらず、料理に派手な飾りつけや仕掛けがあるのが
今日の「会席料理」の始まりで、華やかな江戸文化の背景
から生まれた料理なのです。
余談になりますが、今から400年前に書かれた中国の古典「菜根譚」
には、以下のように記されています。
「酒や料理など、こってりしたものはいずれも本物の味ではない。
本物の味とは、あっさりとしたもので、磨きに磨いていった
その先は、あっさりとした境地に突き抜けていくものだ」
利休が目指した懐石料理も、実にこの境地だったのではないでしょうか。
[ – sara 桜羅 – ]