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田の神が 春は山から降りて田を守る・・柳田國男「年中行事覚書」

「 田の神が 春は山から降りて田を守り、
冬に入ってから、再び山に登って山の神になるということは、
もう本当にそうだと思わない人までが全国にわたって今でも皆記憶している。」


ひと昔前は、農村が多く、人々は自然と向き合い、
感謝し、春の豊かさ、秋の収穫などの筋目に各地で祭りを施し、自然への祈りを込めた。


民俗学を大成させた柳田國男は、
各地に散在する懐かしき年中行事の数々を拾い集め、
その成り立ちや隠された意味を明らかにし「年中行事覚書」としてまとめた。
これは農村の営みと信仰生活の核心に導きゆく名著だと言われている。


日本は、森羅万象に八百万の神を身近に感じてきた民族である。
「年中行事覚書」には、この国の人々の精神性の豊かさが
如実に表れているように感じます。


それぞれの国や民族や、その独自性に気が付き、誇りを持ち、
失わないように大切な努力を続けていくことは、国民性を高め、
その分、国という形も長く継続するのだと思います。


 
しかし、高名な柳田國男でさえ、民族を知ることの難しさを感じ、
それを紐解くことの大切さを説いていました。


 
「人が自らを知るということは、既に容易な仕事ではないが、
国民が自分の国を知るのはそれよりもまた何層倍か難しいことだった。
・・私達は、めいめいの無知に気づくことが必要だ。


今まで分かったつもりでいたものに、実は答えられないことが多い。
今まで私たちの、まだ知らずにいたことが多いということと、
誰もが気をつけて見ておこうとせぬうちに消えてなくなろうとしている

年中行事が幾らもある。

また、そうしたことを説くことに、力を入れた。



 
・・年中行事は小さな問題だけれども、
ことにこの中から色々な新しい疑いが生まれて人の話を聞く楽しみがとめどもなく成長する。
年中行事の研究にはまだ広々とした未知数がある。これがだんだんと開けていくにつれて、
我々の古い歴史周囲の民族との繋がりも分かってくるかもしれない。
祖先は、最初どのようにこの島に渡ってきたか、そういうことも明らかになるかもしれない。
私はまだ答えることはできないが遠い将来を考えるとこの仕事は楽しみである。」


 
柳田國男 年中行事覚書
https://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/53812_50600.html


これらの言葉に感化して思うに、

細々とでも、継続して偉人が残した伝承すべき言葉を、

一人でも多くの人に伝えていくことしかないように感じています。

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