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【能との饗宴】文化人が集うメゾン《水戯庵 SUIGIAN /東京日本橋》

日本で唯一、能の舞台を観ながら食事やお酒を楽しめる場所がある。
― 東京日本橋の水戯庵 (SUIGIAN/すいぎあん) ―
ここは江戸中期に栄えた幻の料亭〈百川〉の跡地に設けられた。
三井が日本橋再開発の折、この場所を現オーナーに託し、
文化の発展を願って水戯庵が誕生したのである。


「能を始め、日本の伝統文化を伝えていく為に、
 我々はどのように継承していくべきか・・」
能や歌舞伎、日本舞踊など、知るきっかけは昔に比べると少なくなっている。
しかし、日本の伝統文化は伝えていく必要がある。
オーナーの固い決意と、その思いに賛同し、選び抜かれた
一流の能楽師や伝統芸能を担う人々が、ここ水戯庵で饗宴の場を開いた。


中でも最も注目したいのが、観世流名門武田家。
武田氏は能楽シテ方五流最大の流勢を誇る観世流において、
四代に渡り観世宗家に仕えている名門・武田家。
現在では友志氏と文志氏の実兄弟と従弟にあたる宗典氏が能楽師の道を継承し、
脈々と続く能の心を広く世界に発信している。
現在、日々数々の舞台出演の傍ら、毎月数十名の指導も行い、
多忙を極める状態ではあるが、オーナーの強い思いに耳を傾け、
こうした新しい取り組みを行っている。


水戯庵の試みについて、武田氏によると、能面も装束も付けずに
舞台に上げるということは、とても力量が求められるものだという。
見る側としては、舞台で舞 (しまい:仕舞) や謡 (うたい:声楽) の実演も
織り交ぜながら能についても語られる為、普段知ることのできない貴重な場面を
体験することができる。



能の舞台が目の前に、舞や謡の響きが振動としても全身に伝わる感覚は、
なんとも言い難い素晴らしさと迫力がある。
舞台では、その方々による「気」や「気迫」を感じる。
その強さ大きさは人によって異なるが、こちらの目が釘付けになるような迫力と、
優美さも兼ね備えている。元々、神聖な儀式の意味も含まれることもある為、
神秘的に感じるのも自然なのかもしれない。



能楽は、日本の最高峰を誇る伝統芸能である。
数ある古典芸能の中で、最も尊く、日本を代表する文化。
重要無形文化財に指定され、ユネスコ無形文化遺産に登録されている。


日本の能の発展は、足利幕府の時代に足利義政が庇護したことが有名である。
当時、足利義政は風雅枯淡の理想郷を築くために、禅僧や能楽師達と
交流を深め、芸術が相まり、独自の文化が生みだされた。
能は今日に至るまで700年継承されてきたが、当時の武士政権にあっては、
観ることが主に武士階級とされてきた為、限られた人々にしか広がらなかった。


能は単に音楽を愛でるだけではない。そこには文化的な思想が含まれている。
また、数奇はいわゆる単純に俗心を捨てて風雅に心を遊ばせ、詩歌管弦を好くという
こととするなら、それもまた名利を脱し、心を救う手立てとなるのではないだろうか。



最後に、ここ水戯庵は、江戸中期に栄えた幻の料亭〈百川〉に恥じぬよう、
能の仕舞とも調和するよう、料理やお酒にも力を入れている。
当代一流の現代の新感覚の文化体験ができる料亭として、
これから国内だけに限らず、世界中で話題になるであろうと感じる。



水戯庵 (SUIGIAN/すいぎあん)
https://suigian.jp/

観世流武田家 
公益財団法人 武田太加志記念能楽振興財団
http://ttmnf.or.jp/

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