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縄文の万葉集 第二回 防人の歌 大伴部真足女の歌

日本最古の歌集、万葉集は、

古代の人の心が映し出されています。

万葉集に書き記された数々の言葉は

1200年前に書き留められたものですが、

その中には数千年に及ぶ縄文の人々の愛と和を

守り伝えている言葉も少なくないと思われます。

だからこそ今も変わらず、美しく愛にあふれ、

心を熱くさせる作品が心に飛び込んでくるのです。

今も昔も、人々は純粋に人を愛し、

ひたむきに生きてきました。

 

古代の人は、厳しくも美しい自然環境と共存するなかで、

目に見えないものへの畏怖を抱き、

また、信じてきたのではないでしょうか。

想いや祈りなどは言葉にすることにより

「言霊」として言葉に力が授かると信じられ、

「結ぶ」ということは、自分の魂を結び込め、

愛する人を守るという、祈りの行為だったといわれています。

人々は純粋に人を愛し、悼んできました。

万葉の世界に人間の根源的な姿を探そうとするとき、

そこに真の姿を力強く感じさせられます。

ひたむきに、真っ直ぐに生きる人々の言葉。

言葉には魂が宿るといわれたように、

多くの方々が言葉に祈りを込め、生きた証を

刻んできました。

 

万葉集は奈良時代末、舒明(在位629~)に編まれて以降、

最後の歌(天平宝字3年・西暦759)まで約130年の間、

全20巻約4500首に、縄文の心を守り伝える庶民から、

弥生の色濃い役人や天皇に至るまで、幅広い人々の心が

映し出されてきました。

いわば万葉集は縄文と弥生のコラボレーションと言えます。

万葉集というと、恋歌のイメージが強いですが、

男女が詠み合う相聞の他、旅にまつわる歌、

死者を悼み悲しみを慰める挽歌など様々な歌が詠まれ、

時代の背景が分ると共にその時代の心情を

捉えることもできます。

 

中でも生死に対し切実な思いを詠った防人(さきもり)の歌は、

心を捉えて止みません。

防人は奈良時代から平安初期にかけて、唐・新羅の侵略に備え

北九州を守った兵士約3千人で、主に東国(関東)の庶民、

すなわち主に縄文人から集められました。

第二十巻には防人やその家族が離別を悲しむ縄文人の心が九十余首収められ、

東国の地には今も尚、当時妻や家族が歌った万葉遺跡が残されています。

 

■防人の歌 大伴部真足女の歌

枕太刀 腰に取り佩き ま愛しき 背ろが罷き来む 月の知らなく
大伴部真足女(集歌4413)

寝る時さえも枕元に置いて離さぬ大刀を、腰にさして、

愛しき貴方が帰ってくる、それはいったい何月のことになるのか・・

防人として戦地に旅立った桧前舎人石前(ひのくまのとねりいはさき)の妻、

大伴部真足女(おほともべのまたりめ)が離れた夫を想って詠んだもの。

遺跡は現在の埼玉県北部に残されています。

 

[ – sara 桜羅 – ]

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