縄文の万葉集 第三回 恋の痛み
万葉集は心から想い慕う情熱的な恋歌もあれば、
恋に嘆き哀しむ歌もあります。
秋風が身に沁みる今日この頃。
風が吹いても、音がしても、
何をしていても心が痛む。
そんな切ない恋をするほどの恋。
心が痛むのは切ないばかりだけれど、
それほど想える人と出会えるのは素晴らしいこと・・
古代語の「いたし」は、
身に苦痛を感じさせる激しさを表しています。
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君に恋ひ 甚(いた)もすべ無み 奈良山の 小松がもとに 立ち嘆くかも (第四、593)
訳:君恋しさにじっとしていられなくて、奈良山の小松の下に立ちいでて嘆いております。
※君に恋ひ 痛み便なみ・・
笠郎女が歌った気持ちで、苦痛に堪えかねるほどの便なさであること。
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風を痛み 甚振る浪の(第十一、2736)
波の穂の いたぶらしもよ(第十四、3550)
ただ揺れるだけではない。
揺られて揺られて苦痛に堪えがたい感情を歌っています。
[ – sara 桜羅 – ]