日本最古の民族誌『風土記』
日本最古の民族誌『風土記』は、奈良時代の初期(713年5月2日)に
元明(げんめい)天皇の詔によりが編纂されました。
当時、全国を統一した朝廷は各国の事情を知る必要があり、
諸国に命じて国や郡、山河や地方の名前と由来、地質の豊かさ、収穫できる産物、
その地で伝わる昔話など六十余国に渡りつぶさに記されました。
また、この時「各地名は良い意味を持つ二字表記に改めよ」という命も下り
日本各地に二文字の地名が多く付けられました。
六十余国もの全国の地誌であった風土記ですが、現在は写本が5つ現存し、
『出雲国風土記』がほぼ完本、『播磨国風土記』、『肥前国風土記』、
『常陸国風土記』、『豊後国風土記』が一部欠損して残るのみで、
五か国を除く大部分は失われています。
平安時代中期の貴族であり、三十六歌仙の一人である源順が編纂した
『和名類聚抄』(わみょうるいじゅしょう/ 辞書)によれば、当時の常陸国は
現在の茨城県の大部分(西南部を除く)と福島県浜通りの大熊までに至る広大な国でありました。
国府は現在の石岡市にあたり、「常陸国府跡」として国の史跡に指定されています。
日本の民俗学者、関敬吾氏は「『風土記』のことを単なる紀行とは異なり、
各地の風土記の著者が他から伝聞した過去の伝承ということを明示している。」と述べ、
国文学者で京都大学名誉教授であった佐竹昭広氏は
「風土記の随所の随所に伝えられる地名起源逸話は、大部分がいわゆる民間語源の所産であって、
そこに示された逸話的形象は、まさしく古代人の人々による一つの解釈であるという
意味において、彼らの思考法・民族・習慣等々がいろいろな形で作用している。」という
素晴らしい言葉を岩波書店の「日本古典文学大系」に書き記しています。
日本各地の情報と魅力が集められ記された『風土記』。
この『風土記』を紐解くように、現代の日本各地の文化と魅力に目を向き続けていきたいと思います。
[ – sara 桜羅 – ]