中国の詩人 蘇東坡
昔、中国の詩人蘇東坡(そとうば)は、師東常総(とうりんじょうそう)に
「無情のものが説法するとはいかなるものか」という難題を与えられました。
蘇東坡は一生懸命考えるがどうしても解けず、失意のうち諦めて山を下ります。
ふと道端で立ち止まると、かたわらで渓流がサラサラと音を立てて流れている。
その音にいつしか耳を傾けて、ふと見上げるとそこには山々のすばらしい
偉容があった。その瞬間、蘇東坡は忽然としてすべてを理解するのです。
人間だけが説法するものだと思っていたが、情の無いもの、
岩や水や木といった感情のないものも説法するのだと。
サラサラと流れる谷川の水は止むことなく説法を続け、雄大な山の景観は、
人々を無の境地へと誘う。
蘇東坡は急いで師の元へ引き返し、いま自分が体験したことを述べ、
師からついに印可を受けたと伝えられています。
[ – sara 桜羅 – ]