プロ棋士の思考術
世界囲碁最強戦で主将として出場し、日本チームに初優勝をもたらした
依田紀基氏。様々な大会で優勝を獲得した氏が書いた『プロ棋士の思考術』を
読んでみると、意外にもそこにはプロの棋士に辿り着くまでの苦難の日々が描かれ、
夢中であっという間に読み終えてしまいました。
依田紀基氏は、小さい頃から勉強せず碁ばかり打って日を過ごしたといいます。
勉強をほぅっておいたのですから当然通信簿の結果もよくありません。
だから依田氏は、小さい頃から「自分は生きていくことができるだろうか」
と、いつも心に大きな不安を抱き続けてきたという。
しかし反面、「これでしか食べていけない」という一念があったからこそ
碁に打ち進む事が出来たのだそうです。
いつも闘って生きていくという事は、常にプレッシャーがかかることです。
負けてばかりいたらお金も入ってこない、厳しい世界。
一時はギャンブルとお酒と女に溺れたどん底の時期もあったそうですが、
這い上がった後に思う事は、必ず乗り越えられるという自信が得られ、また
その経験がなければ強くはなれなかっただろうし、プレッシャーやスランプに
打ち勝てる、本当のプロ棋士にはなれなかっただろうと振り返る。
『プロ棋士の思考術』には碁を動かすにあたり、「なるほど」と思う内容が
書かれています。
「どんなにすぐれた棋士でも、局面が広すぎて第一手はどこに打ってよいか
分からない。そこで辛抱するか、一か八かの勝負に出るか、強きで攻めるか
否か、石を捨てるか生かすのか」、「石の動き、姿、形で形成判断するのだけど、
同じ局面でも見る人によって判断が異なる、それはやはり考え方が違うからだ。」
「全体をよくするには、定石の一手一手の意味を厳しく考え詰めていくことだ。
定石では、なぜそこに打つのか。それを突き詰めることが必要である・・。」等々、
一手一手が真剣勝負なのだと改めて感じました。
そして氏曰く、「ツキ」は勝負師にとって非常に重要であると説く。
「ツキ」はビジネスマンや一般の人にも人生を左右するほどの大切なものであると。
依田氏のいうツキとは、出会いであるという。どんな人や環境、ことがらに遭遇
するか。人生のおおもとの出会いは両親ということになる。だからツキを得たいなら
親孝行せよ。親がいなければ身近な人を大切にすればよい。
孝行をすれば親は喜ぶ。喜ぶ顔を見れば、自分も嬉しい。すがすがしくなる。
そういう感情の流れがツキを呼ぶに違いない。親不幸をすればツカなくなる。
心の持ちようなのだろうけれど、これは勝負に如実に出る為、昔から実感していた
のだと述べています。
また、この本には大局観・判断力を磨く為の「八つのK」が書かれています。
とても参考になり納得できる本ですので、気になる方はぜひ読んでみてください。
[ – sara 桜羅 – ]